日本酒はいろいろな温度で愉しめますが、「やっぱり燗酒でしょ」と言う方も少なくありません。
しかし、家でお燗をすると「お店の燗酒のようにはいかないなぁ」との声が…。
そこで、ここでは菊水がお薦めする、ご自宅でも簡単にできる「おいしい燗酒の作り方」を紹介させていただきます。
お酒を徳利の九分目まで入れます。
お酒を注いだ後、徳利のそそぎ口にラップをすると、 お酒の良い香りの成分が飛びません。
鍋などを用意して水を張り、そこにお酒の入った徳利を鍋に浸します。徳利の半分まで浸かるように水の量を調整します。
徳利を取り出してから鍋の水に火をかけ、沸騰したら火を止めます。
火を止めた鍋に徳利を浸します。
「ぬる燗」にしたいからと、40度くらいのお湯で燗をしようとすると10分以上かかってしまい、しかもアルコール分が飛んでしまいます。なるべく短時間(2~3分)で燗にするのがコツ。
お酒が徳利の口まで上がってきたら、 徳利を持ち上げます。
中指を徳利の底に当ててみて、やや熱いと感じたら、ちょうどいい燗になっています。
※徳利の素材、厚みによって差はあります。
一般に「上燗(45度)」くらいの温度がおいしいと言われることが多いですが、燗の温度は人によって好きずきですので、いろいろ試してみてご自分の好みを見つけるのも燗酒の楽しみでしょう。
電子レンジは急に温度が上がるので、あまりお薦めはできませんが、もし電子レンジをお使いになる場合は、徳利の口をラップなどで覆って加熱して下さい。
お酒1合(180ml)の場合、約40秒(※500W電子レンジ使用時)加熱すると、人肌燗程度に温まります。
レンジで温めると、徳利の上部と下部で温度差が出ますので、20秒ほど温めてから一度取り出し、徳利を振って中の温度を均一にします。再度レンジに入れ、自分好みの温度になるまで調整しながら温めるのがおすすめです。
日本酒は、お酒の性質や温度帯によってさまざまな味わいが楽しめます。
少し手間をかけて丁寧に温めると、ふっくらとした味わいの燗酒ができます。
「燗酒はちょっと苦手…」という方も、ぜひお試し下さい。
お酒を燗にして飲む風習は意外に古く、縄文後期には、底が尖った土器を熱い灰に突き刺し、酒を温めていたと言われています。平安時代になると、貴族たちは秋から翌春まで燗酒を愉しんでいたようです。庶民が酒を燗して飲むようになったのは、江戸時代の中期あたり。江戸初期の儒者、貝原益軒が著書『養生訓』に「凡そ、酒は夏冬とも冷飲、熱飲よろしからず温酒を飲むべし。」と記した影響が大きかったとされています。
燗酒の良さは、冷やではわかりにくい複雑な綾織のような日本酒の味わいを引き出すことです。口に含めば「ふくらみ」を感じ、喉に送ればその深みのある味わいに心を揺すられます。それに、冷やだとどうしても飲むペースが速くなりますが、燗をした酒はそんなに速くは飲めません。しかし、すぐ吸収されるため酔いのまわりは速くなります。気をつけて、お愉しみください。
燗酒は飲んですぐ体があたたまるので「暖房飲料」と考えている方が多いようです。しかし、アルコールは、体の中に入るとひとりでに燃える性質があるので、冷やで飲んでも体はやがてあたたまってきます。ただ、体温と同じくらいの温度になってから吸収されるので、燗酒よりやや遅れてあたたまるだけなのです。
燗の温度は好きずきですが、50℃近い「熱燗」にすると、酒がとても辛くなり、味のバランスが崩れてしまいます。それだけでなく、熱燗ばかり飲んでいると、強い酒をストレートで飲むのと同じくらい食道や胃壁に悪い刺激を与えるという疫学調査もあります。熱燗を続けるのはほどほどに、「ぬる燗」や「上燗」あたりを悠々とお飲みになっては…。